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    平成12年6月8日 第102号

       ガンマナイフ?サイバーナイフ?


                         理事長 岡村 一博

 ガンマナイフ(脳腫瘍等を放射線で治療する装置)は当院に 1998 年 3 月に世界100号機
として設置されました。蓮井センター長、滝澤指導医のもと2年余りで延べ 468 名の方々の
ガンマナイフ治療が行われました。副作用もなく、多くの方々から感謝のお言葉を頂きまし
た。有難うございます。

 さて、2000 年 6 月から国内 3 台目のサイバーナイフが岡山市内の病院に設置されます。
これも脳腫瘍等を放射線治療する装置です。同じような装置ですが少し違いがありますので
比較して見ましょう。

名 称 レクセルガンマナイフ サイバーナイフ
治療対象  脳腫瘍、動静脈奇形、三叉神経痛  同左
治療部位  頭蓋内  頭部および頚部
放射線源  ガンマ線ペレット 201個
(初期3.3-3.4Gy/分)
 X線リニアック (3Gy/分)
患部固定  レクセルフレーム  ライチネンフレーム固定とX線2方向
 撮影で追尾、各方向に2cmまで補正可
 だが回転方向への補正は不能。
照射方法  半球にペレットを配置し、中心部にで
 きた焦点へ患部を動かす。
 6 軸の工業用のロボットアームが136
 キロのリニアックを動かす。
照射野  201 個のペレットの一部を閉鎖すること
 で焦点の形を変えられる。2〜8mm穴の
 4種のヘルメットを自由に組み合わせる。
 患部をヘルメット内で動かして、照射形
 を自由に作れる。
 患部は固定し、ロボットアームは 104
 ノードから12方向合計1248方向へ照射
 可能。コリメータサイズは5mmから60
 mmまでの12種類から一個を選択する。
治療時間  15分〜4時間位。  定位置に来て照射、その後次へ移動して
 照射を行い、約1時間で終了する。
正確度の確認  定期点検のみでよい。  より安全性を高めるために、ビームデー
 タの測定を行い、必要に応じて、ファン
 トムによる実照射テストで、照射精度の
 確認を行うことが可能(取扱い業者による)
機械的な焦点精度  ±0.1mm以内
 (照射精度で±0.3mm以内)
 ±0.4mm以内(代理店)、
 0.9〜1.4mm(阪大)
ソフトウェア  ガンマプラン  サイバーナイフTPS
国内販売開始  1990年12月  1998年 春
国内台数  29台(2000年 4月)   2台(2000年 4月) 
世界台数  138台(2000年 4月)   8台(1999年 8月) 
治療総数国内  26,884例(1999年12月)   約 320例(2000年 5月) 
    世界  111,139例(1999年 6月)   約 900例(2000年 5月) 

 サイバーナイフの第1番のセールスポイントはフレーム固定がない事です。ガンマナイフでは頭部に2cm幅4本のフレームをネジで止めます。 治療当日はフレームを付けたまま照射位置決め撮影をして、治療中つけたままですからざっと半日装着ですが、当院では事前の説明で納得して頂いており、延べ 450 人以上の方々の治療をしましたが、特にフレーム固定が苦痛だとは聞くことはまだありません。ガンマナイフでも大きな腫瘍の治療の場合には数日間フレームを付けたまま分割照射を行っている施設もある程です。
 一方サイバーナイフはガンマナイフのような厳重な固定はしないでレントゲン2方向で頭蓋骨の動きを検知して、秒速1.5cmのロボットアームで追尾する理屈です。フレームを使わないという理想のサイバーナイフは後述の理由で未完成のために、実際は患者をライチネンフレームという装具で鼻と耳の穴に固定具をつけ頭をはさみこんで固定するという手段をとっています。たしかに非観血的ではありますが、これは結構苦しくて耳が痛いものとのことです。 頭を動かしてもロボットアームはすぐには追尾しませんから(後述)、痛くても動かないようにしっかり取り付けなくては危険です。しかしライチネンフレームは容易にたわんで、実際は 0.1 mm 単位の厳重な固定は不可能です。レクセルフレームの方がはるかに信頼できる固定方法で、患者さんの苦痛も少ないのは定位脳手術をする脳外科医は知っています。

 ガンマナイフは CT、MRI、血管造影をオンラインや画像読み取り装置から読み込み、フレームをマーカーにしてプランニングをします。サイバーナイフでのオリエンテーションは頭蓋骨が基準になります。骨の X線像が基本ですから、照射野決定はCT像が基本です。基本画像は3mm 厚のCTの 81 スライス分だけです。頭頂部がオリエンテーションで必要ですから、頭頂部から81×3=243mmが治療対象になります。(これが C-3 レベルまでという制限の根拠です。)ガンマナイフではCTを使用するのは少ないですが、CTを使う場合でも1mm厚のスライスが基本です。3mmスライスのCTでは数mm以上の正確度は望むべくもないでしょう。
 サイバーナイフではMRIを直接使用できません。ライチネンフレームを付けて、もとになるCTをとり、同じフレームでMRIをとって、CTとMRIが同じであると仮定して頭蓋骨をガイドに照射するのです。大きな問題はライチネンフレームはレクセルフレームと違って2mmの誤差は避けられないと言うことです。MRI像なくしては腫瘍への正確な照射は望むべくもありませんし、2mmの誤差をはらんでのMRI画像ではとても信頼できず、脳幹部等では危険ですらあります。血管造影像もとり込めませんから、動静脈奇形の治療ではCTアンギオを使用します。その正確度は専門医ならば疑問を呈するでしょう。

 体動にアームが理想的に追尾できるか、そしてそもそも 136 Kg のリニアックを支える6軸工業用ロボットが精度よく狙えるかの問題があります(公称誤差 0.35mm以内だが、この先からビームが80cm先を狙う)。サイバーナイフを発想したという湾岸戦争でのパトリオットミサイルの活躍、これは期待はずれの成果でしたが、 これが示すように移動する対象を狙うのは至難の業でしょう。 事実、サイバーナイフでは対象が動いてもリアルタイムにロボットアームが追いかけて行くというものではありません。実際は頭部の動きの検知を連続的に行うのではなく、数秒毎に X線画像が撮影され、その時点の画像をもとに頭部のズレを計算して、ロボットアームを補正した位置にもってゆきますが、これに更に数秒かかります。これでは2〜3秒毎に頭の位置が動くと全くでたらめな位置に照射されてしまう事になります。頭部の位置のズレ検知も上下方向、左右方向へはできますが、頚を捻る動きは検出できないのも大きな問題でしょう。 結局、MRIでの腫瘍の位置決め撮影の時のみならず照射時にも厳重な固定が不可欠になります。また 102 ヶ所しかない定点からの照射では照射方法に制約も多く(新機種は1248方向とのこと)、また1Shot2〜3秒を1病変に100 Shotsすると1時間が必要と言われ(同じ線量ならガンマナイフで20分以内)、照射時間は長く、ソフト的にもMRI画像の直接読み込みは現バージョンでは不可能なうえ、ソフト上の制約で一度に 3〜4ヶ所までの照射しかできず、多発腫瘍を分割照射と称して翌日やるとなれば患者さんの負担は結局重くなるでしょう。

 サイバーナイフでのレントゲン被曝も大きな問題でしょう。81スライスのCTに加えて、術中の 2秒毎の 2方向からのX線撮影は60分間治療を受ければ60×60÷2×2=3600回の頭部レントゲン被曝となります。

 以上より現時点では ガンマナイフの方が圧倒的な支持を受けているのは当然です。 サイバーナイフ出現後もガンマナイフ採用の施設の方が圧倒的に多く、実際の治療実績の圧倒的な多さでも明らかです。両機種が入っているクリーブランドクリニックでは、サイバーナイフはラジオサージャリィでは使用されず全脳照射に近いラジオセラピイとしてしか使用されていないとのことです。

 ≪まとめ≫
 全身への応用の可能性を持つサイバーナイフは魅力的です。
現在でも顔面、C3より上方の頚部病変に限ればサイバーナイ
フあるいはXナイフが治療の選択肢の一つとなるでしょう。
しかし頭蓋内病変に限って現時点で比較すれば、照射正確
度、コンピュータソフトの優秀さ、ハードウエアの信頼性、
総合的にみた患者負担そして多数の治療実績の積み重ねか
ら得られた安全な照射と治療効果を考えるとガンマナイフ
の方が比較にならない程に優れています。



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